情報の平等化 Equality of information
■ 情報の平等化
私達が一刻も早く行わなければならない事の一つは、情報の平等化の中の一つ、「多くの言語・多くの情報伝達方法による同一情報の同時発信・受信システムの構築」です。 このことを具体的に進めるため、まずは2013年11月1日点字の日に行った「未来へ点字をつなげる宣言」と、この宣言の監修をされた岩井和彦さんの15才の時の弁論を、多言語・多方法で発信していくことを行っていきます。 これは、REFの活動の柱の一つである「情報の平等化」の整備へ向けた試みの一つです。 この「平等化」という概念は、今、平等になっていない部分を平等に近づけるという作業なので、マイナスになってしまっている部分を「ゼロに近づける」作業だと考えます。「スタートラインをまずは整える」ということです。スタートラインを整えたその先、更にまたその先に行わなければならないことが沢山あります。現実的には、どうしても時間がかかり歯がゆいばかりですが、何年先、何十年先、何百年先になるか分かりませんが、この「平等化」という概念が、当然で、当たり前に実践されている社会が来ることを信じて活動を進めていきます。 この「情報の平等化」の考えを深める切っ掛けとなったのは岩井和彦さんとの出会いです。岩井さんが書かれた本「視覚障害あるがままにLet it beー夢は情報バリアフリー 」の中に、 『その人自身の人生に直結する情報の整備』 『心を磨く、心を豊かにする情報の大切さ』 が書かれています。 この事は、人と人との間のコミュニケーションにおいても言えることです。 本当のコミュニケーションがなされ、互いの人生が、より豊かになるようにつながる事・・・。 そして、それが人の心を豊かにしていく事・・・。 この事を保障する最低条件は、その人自身の情報を発信・受信するための方法を、しっかりと整備していく事です。現に今まさに、その条件が整っていないがために、コミュニケーション手段がなく、受信・発信ができない様々な状況にある人に対して早急に行われなければならない事です。コミュニケーション手段がない人の中には、私自身が今その状況を知らずに分かっていない、その人自身だけのコミュニケーション方法を使用されている人がいるはずです。使用する方法、伝え方が少数になればなるほど、整備されなければならない事と強く思います。 今、この時にも、さまざまな状況の中にいる人達がいます。私自身、そのことを、まだまだ、まだまだ、知りません。常に現実の中から、出会った人達との中から、学び続けていく姿勢を持ち続けていく必要性を痛感しています。 そして、情報の発信・受信を考えた時に、一人のその人の情報発信手段の確保が、必要であると考えます。全ての人の発信手段が確保され、その発信内容が、即座に様々な言語や文字、コミュニケーション方法に訳され、様々な人のその意思が届くシステムができたならば、地球上には、もっと多くの対話が生まれ、未来は良い方向へ進むと確信します。そのためにも、全ての人の発信方法の確立が急務であると、これも確信しています。岩井和彦さんも、こう言われていました。「自分の思いを吐露すれば、きっとそのことに共感して共に歩んでくれる人が現れる」と。これは、その人自身の意志を表すことであり、同時にその人自身の存在そのものをしっかりと表明するという事です。この、自分自身の思いを吐露するという事は、その人の思いが伝わる情報の発信方法、受信方法、コミュニケーション方法が確立されているという事が、絶対の条件になります。このことは、点字を15歳で自ら考案した、ルイ・ブライユの次の言葉に集約されています。 『意思を伝え合おうとすることは、もっとも広い意味で、知識を求めることであり、これは私たちが、目の見える人から、より劣った人間として軽蔑されたり、導かれたりしないですむようになるために、非常に大切なことです。私たちは、哀れみはいらないし、弱い人間なのだと思い知らされる必要もありません。他のすべての人と対等に扱われなければならず、意思を伝え合うことによって、それが可能になります。』 岩井さんは、ルイ・ブライユの本を、数多く読んでこられましたが、その中でも、この言葉が一番、心に響いた言葉だと話してくださいました。それは、私も全く同じ思いで、この言葉は、点字にとどまらず、全ての情報、全てのコミュニケーションについての核となる事だと考えています。 その人の発信システムが確立されれば、同時に受信システムが確立されると考えます。私は、その方法を技術的に作れる力は持っていませんが、必ず世界中のどこかに、それを可能に出来る人がいると確信しています。 今の社会の情報環境のあり方では、目で見る文字、墨字が先に発信されて、その後、点字や音声や手話によって発信されるという「時間差問題」があります。この「時間差」を、先ずはなくさなければなりません。どの方法を使用する人も、同時に同じ情報を共有出来る環境が当たり前に整っている。将来実現されるそのような情報の時間差のない社会においても、その情報を取るか取らないかは、勿論、本人の選択の自由です。「選ぶ事が出来る」という当たり前の事が、何よりも大切です。 多和田悟さんも、講演の中で、時間差の問題を次のように表現しています。 『コンセンサスの英語の辞書。ポケットに入ってしまう。あれが点字だと100冊。その中で "dog" という字を調べるとしても時間がかかる。例えば「今のベストセラーが読みたいな」と思う。「この本読みたいな」と思って「大急ぎで点訳してください」と言っても、出来てくるのは1ヶ月後。日本のベストセラー、もう変わってるね。時間が違う。今はやりの本を読んだ時にはもう時間が過ぎてる。』 情報とは、そしてコミュニケーションとは、本当に不思議で、あまりにも大切なものです。たった一言が、たった一文が、その人の人生を変革してしまう、そんな可能性、力を持っているのです。そのことが成立するためには、その人の方法で、情報が入る事や、情報を伝える事、そして他者とのコミュニケーションが成立する事が、大前提であり、絶対的な条件となるのです。 この「多言語・多方法の同時発信・受信システムの試み」は、理想とする形には、まだまだほど遠いですが、とにかく進めていきます。
■ ■ ■ ■ ■ ■