多和田悟 対等な関係
■ ■ ■ 多和田悟 対等な関係 YouTube版 ここをクリック ■ ■ ■ ■ ■ ■ 多和田悟 対等な関係 テキスト版 ■ ■ ■ (佐々木亜紀)現在、日本盲導犬協会の常務理事をされている、多和田悟さんが、 平成3年に、四日市市 社会福祉協議会主催の講演会で話された内容の抜粋 テーマは「対等な関係」 (多和田悟) 皆さん、おはようございます。対等な関係ってことに、ここしばらくこだわってます。 何が対等な関係なんだろうな。例えばあのことができない、このことをしてもらわなければならない、それは人格の優劣を決めることになるのかったら、決してそうではないってことだけは分かります。 まさに対等な関係っていうのは、それぞれの意識の中にある問題かなと思います。 お年を召した方、若い方がうらやましいですか。顔にしわのないことが、やはりうらやましいでしょうか。女性は男性がうらやましいでしょうか。年をとっていく、ここの目じりにしわがなかった時がある時よりも優位に立ってる、なんてことはないと思うんですね。 ターミナルケアのシンポジウムで、お医者さんの側から、こういう意見がありました。我々は病気をみてきて、病人をみてこなかった。例えば目の見えない人に声をかければ、それで済むんだ、技術ですね。このように手引きをすれば歩けるんだ、技術の中で事を迫っていっても、決して正しい対等な人間関係の中で得られる喜びってのは出てこないんです。それは、する側もされる側も。‹br› 目の見えない人達に対して、障碍を持つ人達に対して、我々がある部分「加害者」である場面、何か。見えないために、行う社会活動が制限される事、これは、見える見えないって言い方をするんなら、見える我々が加害者である場合が非常に多いです。点字ブロックを頼りにして歩いている人にとって、点字ブロックの上にのってる自転車は、まさに邪魔なんです。 電車に乗って、「キャー、怖い。私、犬嫌いなんだから、連れてこないで」「どうしたらいいんでしょう、そういう時に」って相談受けます。「私も好きで連れてるんじゃない。私、見えたらこの犬連れてこないです。あなたは好きか嫌いかで議論されるけれど、私は好きか嫌いかでこの犬連れているんではない」そこまで言っていいですよって、僕言います。 見えないために被っている社会的な不利益。これはほとんどの場合、障碍のない人がある人に押し付けているものです。駅からこのホールまでくる間、点字ブロックが敷き詰めてあります。点字ブロックって、僕の知ってる値段では、1枚700円なんですね。「10枚敷くと7000円、100枚敷くと7万円。だから、一日に一人利用するかしないか分からない点字ブロックにお金使うよりも、他の人全員がもっと喜ぶ方法取りましょう。」この考え方っていうのは、排除していく考え方です。一人でも「痛い」って言う人がいたら、それは痛いんです。「嫌だ」って事があれば嫌なんです。我々は、無意識のうちに加害者をやってることが、結構あります。人を傷つけることが多くあります。言葉の端々、そして、その挙句に言われる言い訳は「そんなつもりで言ったんじゃない」じゃあどんなつもりで言ったんだってことになってしまう。「そんなつもりじゃなかった」じゃあ、どんなつもりなの。自分の「つもり」なんですよね。相手の「つもり」じゃないんです。「痛い」っていう人がいる以上、その痛みは取らなければならない。しかも、「自分が加害者であるかもしれない」という一つの大前提に立ってください。‹br› 医療の面の中で、キュアとケアって言い方をしました。だったら心を込めて胸をさすってれば、病気治るんかったら、治らないんです。確実な治療をしたうえでないと、治らない。だから皆さんが、ボランティアっていう形の中で、社会参加をされていくうえで、一番知っておいて頂かなければならないのは、「やさしい気持ちだけでは何もできない」という事です。それに裏打ちされた技術、そして方法、これを確実に押さえておいて頂きたい。例えば手引き、「あの人にだけは手引きされたくないな」って言う人にならないで頂きたいですね。嫌われる人、詮索したがる人。それと、自分の仕事の範囲を心得ていない人。例えば自分が手引きした目の見えない人。「あなた何で失明したの」それは好奇心で興味がありますね。自分の好奇心を満たすことと、相手がその重い、すごい事実のうえに生きてるんだっていうこととは、全く違うんです。事実として「ここに目の見えない人が一人いる。その人は私の目を使うことによって自分の歩きを取り戻せる」その事実があるだけです。いつ失明してどういう気持ちだったのか聞いたところで自分の興味を満たすことは出来ても、その歩行を楽しいものにすることはできないです。こういう風に、キュアとケアの部分をきちっと分けて考えなければならない。‹br› こういう言い方をされます、よく新聞載ると。「この人は見えないというハンディを乗り越えて、これだけの事をした」って言い方をします。おかしいんです、この言い方は。何でおかしい買って言ったら、ハンディキャップは社会的な不利益、これについてのみ語る言葉です。もっと極端に言います。その人の障碍をハンディキャップにしてはならない。これがその障碍者を取り巻く周りが持つべきポリシーだと思います。 盲導犬の話をちょっとしますと、盲導犬が、最後の卒業試験で、殆どの場合高島やへいくんです。高島屋へ行って何か買い物をして帰ってくるんです。阪急電車を使っていくんです、ほとんどの場合。そしてある人が、阪急電車に乗りに行きました。自分は23年間犬を待っていた。それは何の為かっていったら、人の手を煩わせずに自分で行きたいからだ。その人が「人の世話になりたくない」って言って、阪急桂駅に電話かけて、阪急電車、終点の河原町駅、構造を聞いて、そして高島屋に電話かけて聞いて、「ようし、これで完璧」って出かけました。駐車場から桂駅に行くときに、のぼるべき階段、犬、見つけました。「やったね」と思いましたね、僕ら、隠れてる格好ですから。そしたら電車が到着して上から人がダ~っと降りてきた。犬からしたら人も障害物ですからよけます。もうパニック、どこにいるか分からない。自分の立ててた計画が全部パアになってしまった、一瞬にして。その時からやっと彼は始まったんですね。横断歩道で立ち尽くして待ってる。電車の音はするんです。「さてどうしたもんだろう、どこで間違えたんだろう」って考え込んでる。そうするとある奥さんが「どちら行かれますか」「桂駅行くんです」「じゃあ、どうぞ」って手引きしてもらって、行って、「もうここから分かりますから」桂駅行って券売機行きました。130円、130円知ってますからね。買いに行くんです。「大丈夫です、自分でやります」行きましたら、まあ、最新式の自動券売機。テレビの画面になっててどっか触れっちゅうんです。平面おんなじ。どこ触ってもエラーが出る。隣のおじさんが買ってくれました。そして、そのおじさん、「どこまでですか?」「河原町まで」「河原町のどちらへ?」「高島屋へ行ってきます」「あ、私も行くんですよ。一緒行きましょう」いっちゃったんです。で、高島屋入って、お漬物を買いに行って、お漬物売り場のお姉さんが阪急の入り口まで送ってくれて、改札のお兄さんが手引きして「この電車に乗って、いくつ目で降りてください」ってやったんです。彼は肩落として、喫茶店で待ち合わせしたんです。「俺は、どうもこれは、不合格だわ。犬、全然使えんかった」って言うんですね。喫茶店で、「高島屋行ってきたんでしょ」って言ったら「うん、漬物買ってきた」って見せてくれた。「合格ですよ」「何で」って言うんです。「私、全然犬使えなかった」僕、もうおかしくなってきて、おじさんあんまりしょぼんとしてるから。「あなたが犬持つ目的なんですか?犬を使う為?犬と暮らすため?」「行きたい時に好きなように行きたいから」「行ってきたじゃないか。ちゃあんと阪急電車乗って、高島屋行って、漬物買ってきたでしょ」「そら買ってきたけど、犬使ってない」「犬使わなくてもそれできたなら万歳じゃないか」そしたら、「それでいいんですか」って言いました。往々にして、そういう事ってありません?何のために。 また、逆に我々が警戒しなければならないのは、視覚障碍者で盲導犬を申し込んでこられる方の中に、犬を持つことを目的にされる方がいらっしゃる。歩きたいからではなくて、犬を持つことを一つの目的にしてしまう。そういう人達には、僕、他の方法考えます。犬は負担になります。歩くっていう大きな利益がなければこんなでっかい犬家に飼ってたらじゃまになるばっかりです、特に見えない人がそれをやろうとしたら。ですから、われわれは、常に考えていかなければならないのは、その人が何をしなければならないか、どういうサポートができるか、っていうことを考えていかなければならない。一番正しい方法、「本人に選択する余地を残しておくこと」「それを決めるのは本人だ」ということを知ること。具体的にお話しします。犬を触っちゃいかんって言い方をされます。仕事中の盲導犬、触っちゃいかんのだ、言われます。僕、そんな事ないのにな、と思う。何で触っちゃいけないか。私のものじゃないからです。犬かわいいな、触りたいな。黙って触る。触る側の論理しか優先されてません。そんな勝手なこと決めちゃいかんのです。しかも可愛いから触る、それは褒め言葉です、確かに褒め言葉です、「可愛いですねえ。」って言う事と、触っていいかっていう事は別ですからね。「大きな犬ですね、触っていいですか?」そうしたところで、やっと「あ、触りたがってるんだな」「今、急いでるからちょっと勘弁、仕事に遅れるからまた次の機会ならどうぞ」もしくは「はい、どうぞ」って言ってくれると思います。選択するのは私ではなくて彼女。これは全ての人生においてもいえるんです。 例えば皆さんがガイドヘルプをされることになったとします。街で、目の見えない人が立っています。「あなたはここを持ってください。このようにしてやってください。」ではなくて、「どういうお手伝いしたら、あなたにとって一番快適なのか」っていうことを聞くべきです。「目の見えない人、何もできない人、可哀想な人、手伝いがいるに違いない」と思うのは、こっちの論理で相手の論理じゃないんです。一番正しい方法、「お手伝いしましょうか?」「いりません」って言われたら「じゃあ気を付けてね」って、これで話しは住むんです。非常に和やかでしょ。「お手伝いしましょうか」「いいえ、結構です」「じゃあ、気を付けてね」「ありがとう」って必ず来るはずです。盲導犬は、目の見えない人が、自分の目で見る代わりに犬の目を使っているに過ぎないんです。盲導犬ができること、わずかに3つだけです。角を探すこと、段差を探すこと、障害物を探すこと。この3つだけです、よこしてくるサインは。通常皆さんが一日一キロ歩かれるって事は、ほとんどないと思います。今日、朝から一キロあるいてこられた方ってそう多くはいらっしゃらないと思うんです。一キロ歩くのに要する成人の時間、約15分。一日の間で確実に一キロ以上歩くって人はあんまり多くはいない。一日に歩く時間ってわずか15分です。そのために犬を持ってる。そうすることによって、23時間45分が解放されるからです。友達の都合を気にしなくていい、家族の都合を気にしなくていい、思った時に思ったように出られる。それと、僕が目指してる対等な関係のある社会、これは「すみませんって言わなくていい関係」。すみませんっていわな蹴ればならない場面ってあります。自分が悪い時にはすみませんと言えばいいです。ですけども、自分が道を聞くのに何で「すいません」って言わなければならないのか。例えば見える人であれば、何々通りって書いてあるそれを見ていける、見えないためにそれを利用できない、そのために人の目を使う事は、決してすいませんではないんだって、それは見える人の義務なんだってやっぱり思います。ボランティアにとって一番必要なこと、共に生きる社会、対等な関係を目指す社会、だろうと思います。皆さんが何か見えない人に、障害のある人にお手伝いをしたときに、「ありがとう」って言葉が返ってきたときに、「これは私の喜びなんですよ」って言える社会、まさに対等であるな、と思います。よく「目の見えない人、あの人らは、やってもらうことばっかり知ってて、感謝がない」って言い方をします。「感謝をしなければならん人・感謝をされる人」この溝の前に、対等な人間関係は一切ありません。対等な人間関係を目指すために、僕もまた考えます。次、お会いした時に、こういうのも対等な関係であった、こういうのは対等じゃなかったってお話しができるかもしれません。対等な人間関係、このことを考えていきたいなと思います。どうもありがとうございます。(拍手) 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