■ ■ ■ 盲導犬を蹴ったという動画について ■ ■ ■
盲導犬を蹴ったという動画について REF(リアル・イクアリティ・フィールズ)は、真の平等の実現を目指す活動を行っている団体です。本当に必要なことが、本当に必要な人に、なされる社会を目指して活動をしていきます。 「ある盲導犬使用者が盲導犬を蹴って虐待をしている」という決めつけの下に、動画に取られて拡散された事に、強い憤りを感じています。 一個人が、見ず知らずの他人を勝手に撮影し、それを動画にして不特定多数の人が観れる状態にするという、あまりにもモラルに反する行為に強い憤りを覚えます。この動画で非難されるべきは、動画に映っている人やその内容ではありません。見ず知らずの他人が、本人の承諾なく勝手にその人の行動を撮影し、それを不特定多数の人が閲覧できるようにするという、その行為そのものこそが、非難されてしかるべきはずです。撮影した本人は、相手の人のことは全く知らない他人のはずです。それなのに、その人の行動の一場面を切り取って、虐待と決めつけ、本人には声掛け一つせず、承諾も無く勝手に撮影し投稿する、、、。わたしは、この動画を見た時、その内容そのものより、見ず知らずの他人を勝手に撮影して、勝手に投稿したという、人としてのモラルを極端に逸脱した行為そのものに強い憤りを覚えました。そしてそのことの罪深さを、おそらくは自覚していないであろう投稿した本人と、それを見た人達の中から、盲導犬を使う人を責める声があがっていることに、本当に驚きと強い憤りを覚えました。いかなる理由があろうともその人の承諾なしに、勝手に撮影して勝手に社会にさらすという行為は、してはならないことです。これは当然のことのはずです。 この動画について、まず問われるべきは、その人が知らないところで知らないうちに他人に勝手に撮影され、勝手に動画に載せられた、というところのはずです。そしてもう一つ、撮影された人は、目が見えない、または見えにくいので、勝手に撮影されていても、自らは気が付きづらいということです。見えていたら、または誰かにその状況を知らされたら「何で勝手に撮影しているのですか」や「辞めてください」と伝えることができます。それが出来づらい状況の中で、本人の承諾なく勝手に撮影するという行為に、さらに罪の深さを感じずにはいられません。 この動画が投稿されたことによって、私が何より気がかりなのは、動画に映っている方と、そして全ての盲導犬を使用している方々のことです。この動画を投稿された方とは、私は直接知り合いではないのですが、自分の姿が勝手に撮影されていたと知った時、どのように感じ、今、どのような思いでいるのか、、、と考えを巡らさずにはいられません。そして今、多くの盲導犬使用者の方々が「自分も外出先で勝手に撮影されるんじゃないか」と不安になっている現実があります。「勝手に撮影されても自分には分からない。気にしながら外出するくらいなら、いっそ家にいた方がまし」という声もあります。この動画によって、例えば、今まで10回外出していた所を、5回の外出に減らしてしまう使用者がいたとしたら、、、。この動画によるその人の人生に対する影響の大きさを思うと、心が痛み、この動画に対する憤りをより強く感じます。 そしてもう一つ重要なことがあります。それは、この動画の問題場面について、動画を見ただけでは、どのような状況の中で、何が起きていたのか、という事実に基ずく正しい判断が公平になされていないということです。一方的に「虐待場面である」と断定した一個人が投稿したものであるということです。この動画を撮影していた時、撮られた本人の状況が本当はどのような事だったかは、本人に聞かなければ誰も分かりはしないのです。そして虐待かどうかは第三者に冷静な判断を求める必要があり、そのためには盲導犬を使っている本人に状況や事情を聞き、現場での検証をするなどの一連の確認作業を経なければならないはずです。一個人が偏った少ない情報だけで素人判断するのは当然、適切ではありません。社会には第三者が多くの情報を集めて公平に正しく判断するというルールがあります。警察や司法はこのルールの上でしか判断できません。それでも冤罪は起こりえます。それだけ、正確な判断のためには慎重であらねばならないのです。 単にネットの動画だけでは誰も何も判断できないということです。また、この動画に投稿されたご本人が使用している盲導犬の協会は、2017年10月23日付けで『警察とともに冷静に観察した上で申し上げるならば、この映像一つだけをもって「蹴った」と断定することはできない、というのが公平な結論と考えます』( 「盲導犬を蹴ったという動画について 公益財団法人アイメイト協会」のホームページ(pdf)より抜粋)と発信しています。この事以上にはもう事実として他者が何かを語ることはできないのではないでしょうか。 数秒間の断片的な一場面だけを見て、勝手に「蹴った」「虐待だ」と思い込み、一方的な決めつけをすることは、絶対にあってはならないことです。それがたとえ、障碍がある人やその移動支援の専門家や組織であっても、この興味本位に拡散された動画の情報だけで、本人のことやその時の状況も知らずに、断定的なコメントを出すべきではありません。専門家であればなおさら、その時の状況は本人に直接しっかりと聞かなければ何も分かりはしないという事は現場の中で痛感しているはずです。専門家や組織が発信する内容は、一般の人が発信するよりも、多くの盲導犬使用者と社会に多大な影響を与えてしまう、その内容によっては悪影響を与えてしまう可能性が非常に高いから、なおさらその内容にはより慎重であるべきと強く思います。 ここ数年目覚ましい発展を続けてるネット社会。この技術が、本当の意味での知恵を持って、全ての人やものごとの希望にしっかりと繋がるような使われ方、発展の仕方になるよう、願うばかりです。(2017.10.28)
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