自己中心性からの脱却

   2014年4月16日に、韓国フェリー事故が起きました。
事故にあわれた方、その人、一人ひとりには、その人にしかない人生があります。そして、その人には、共に生きてきた家族や友人などの大切な人達がいます。事故は、その人自身の人生そのものと、大切な人達の人生をも、一変させてしまったのではないでしょうか。「亡くなられた方の人生は突然に絶たれ、その家族や友人は、苦しい思いの中に生きている。本当は、そんな思いをする必要はなかったのに・・・」報道が伝わるたびに、そんな辛い思いがつのります。
   なぜ、こんな事が現実に起きなければならなかったのでしょう。私は、どうしても、人間の「自己中心性」が、その大きな原因の一つになっていると思えてならないのです。そして同じように、我が国や世界中で起きている、多くの悲惨な出来事や理不尽な事々も、この自己中心的性が原因で起きていることが、実は多いのではないか・・・。これらの事は、個人や組織が、自己の利益のみを優先し、他者のことをまったく考えないという、「自己中心主義」によってもたらされたものではないだろうか、と思えてならないのです。
   この「自己中心主義」は、ＲＥＦが「誰もが、当たり前に、真の平等を目指して」「本当に必要なことが、本当に必要な人に、なされる社会をめざして」という「真の平等主義」の理念に基づいて活動していることに真っ向から対立します。隣国、韓国の事故の犠牲者に、私の友人や知人はいませんが、私は多くの悲しみと憤りを感じ、冷たい日々を私の日常にも、もたらしました。そして、今やＲＥＦの活動にとても関係あることと強く認識しています。その理由は、次の問いに込められています。

「なぜ、ＲＥＦが目指す平等な社会は、
         あたりまえには実現しないのか？」

   私はこの事故から気づかされました。この問へ答える現実的な行動の一つが、実は社会にあるのではなく、一人ひとりの心にあるのではないだろうか・・・。一人ひとりが「自己中心性からの脱却」をすることが重要ではないだろうか・・・、と。
   韓国フェリー事故の報道内容から察するに、加害者側に垣間見て取れるのは、被害者へ思いを馳せることどころか、自己の利益のみを追求している保身的な姿です。自己中心性です。具体的には、自分の責任において引き起こされた結果であっても、しかも、他者の人生へ多大な不利益が生じているというのに「隠ぺいしてしまえばよい」「常に自分さえよければよい」「いつまでも自分のいる組織さえ守られればよい」という自己中心的な態度です。
   残念ながら、私たちの世界には自己中心性が、はびこっています。しかし一方で、希望もあります。悲惨な現実に身をおきながら、自己中心性からではなく、他者のために行動をした人達が、いつの時代にも、どこの地域にも実際におられました。この事故の時も、他者のために行動した人達が、やはり、おられます。どちらも、同じ人間です。でも、その行為の結果は、全く違うものでした。一方は絶望に至らしめ、一方は希望をもたらすものです。
   このことは、常に、私達一人ひとりの生き方においても、問いただされることです。私たちは、日々の行動につながる心の在り方を、自分で選び、決めることができるという自由を持っています。例え、どのような状況におかれたとしても、自分の心については、自分の選択によって決めることができます。それは、他の誰も、阻害できません。そしてその心の在り方が、次の自分の行動や、未来を決めていくのです。悪しき社会的問題も、発端は、個々の心の在り方が決めているとも言えます。自己中心的な方向は、自分の利益以外のものに無関心で、結果、他人の心や命を傷つけます。自己中心的故に、傷つけていることすらも気がつかないという恐ろしいことになっているのではないでしょうか。でも、その逆の心の在り方も、人は選んできているという、人類の歴史があります。それができる潜在的な可能性を、人は皆もっているはずなのです。
   人は、誰もが、誰かの生きる希望につながる関わりを持てると信じます。それには「自己中心性からの脱却」が、一つの重要な鍵になるのではないかと思えてなりません。
   この事故は、絶対に風化させてはいけないことです。決して他人事ではありません。この事故にあった人や、その家族の人達の心の傍に、そっと少しでも、共に寄り添えることを切に願っています。
   そして私自身も含め、社会全体が、今、この地球上に共に生きている全ての人が、「自己中心性からの脱却」を目指すような生き方をする事が、希望ある未来へとつながる鍵であると、思えてなりません。